インフルエンザ脳症のガイドラインについて
インフルエンザは大変つらい病気ですが、タミフルやリレンザ、イナビルなどの抗インフルエンザ剤を服用すれば、ウイルスの増殖を抑えてくれますので、3日をピークに回復していきます。
しかしインフルエンザに罹った場合、気をつけたいのがインフルエンザ脳症です。
主に5歳以下の幼児発症例が多く、発熱後、急速に悪化していきます。
けいれん、意識障害、異常行動などの神経障害が見られたら、医療機関を受診しましょう。
インフルエンザ脳症のガイドライン
インフルエンザ脳症とは、インフルエンザをきっかけとして生じた脳症という意味です。
脳炎は主にウイルスが直接脳に入って増殖し炎症を起こし、脳が腫れます。
脳症は、脳の中にウイルスは見当たりませんが、それでも脳が腫れ、頭の中の圧力が高まっていき、機能が低下して意識障害を起こします。
インフルエンザ脳症の特徴
インフルエンザの流行時、特にA香港型が大流行するときに多発して、主に6歳以下の子供が発症します。
特徴として、インフルエンザの発熱から数時間~1日と神経症状が出るまでの期間が短いです。
主に、けいれん、意味不明な言動、急速に進行する意識障害が症状の中心です。
死亡率は30%であり、後遺症も25%の子どもに見られます。
日本ではインフルエンザの流行時に多発しますが、欧米での発症は非常に少ないです。
インフルエンザ脳症の症状
脳症かなと思ったときの対処法
インフルエンザ脳症はたいへん重い病気です。
亡くなってしまうことや、重い後遺症を残すことがあります。
治療法についても、まだまだ分からないことがありますが、できるだけ早く診断し、治療を始めた方が軽くてすむ可能性があります。
インフルエンザ脳症の症状
インフルエンザ脳症でよく見られる症状は、けいれん、意識障害、異常行動です。
けいれんは1分程度の短いものから、20分以上も続く長いものまであります。
1回だけのこともありますが、何回も繰り返すこともあります。
意識障害は眠ったようになってしまい、呼びかけや痛みで刺激しても目が覚めないような状態です。
軽い意識障害では、ボーッとしているとか、ウトウトするというような状態のこともあります。
異常行動とは、普段とは全然違うおかしな言動で、様々なものがあります。
幻視・幻覚を中心とした意味不明の言動です。
お母さんがそばにいるのに、お母さんを探し回るとか、理由もなくおびえたり、激しい場合には、自分の手を食べ物と勘違いしてかじったりすることもあります。
インフルエンザ脳症では、熱が上がってすぐにこのような症状が現れることが多く、けいれん、意識障害、異常行動が起きたときには、脳症の始まりの可能性があります。
また、熱性けいれんや熱せんもうと呼ばれる症状があります。
脳症でなくても、高熱で異常行動を起こす場合があり、熱せんもうと呼ばれます。
インフルエンザになり、高熱が出ていて異常な言動があっても、すべてが脳症とはかぎりません。
異常行動が長く続くときや、けいれんを伴った場合はインフルエンザ脳症が疑われるので要注意です。
インフルエンザ脳症の病型分類
古典的ライ症候群・・・脳全体の浮腫
ライ様症候群・・・脳全体の浮腫
出血性ショック脳症に類似した型・・・脳全体の浮腫、出血や閉塞が加わりやすい
急性壊死性脳症・・・脳全体の浮腫+局所性病変(視床・脳幹)
けいれん重積型・・・大脳皮質の一部に浮腫
インフルエンザ脳症の原因
ウイルスに感染すると、体が様々な反応をして、炎症がおこります。
発熱、咳、痰といった炎症の徴候は、実はウイルスの増殖を妨げます。
痰の中にウイルスを排出し、咳の勢いで体外に追い出します。
炎症反応が生じる際には白血球が主役を演じて、ウイルスと戦いますが、その他にも顆粒球、マクロファージ、Tリンパ球、Bリンパ球など、いろいろな種類があります。
これらが連絡を取り合い、戦いますが、この連絡手段となるのが炎症性サイトカインという物質です。
サイトカインの働きは、人体に有益なものがほとんどです。
炎症反応で体はウイルスに勝ち、病気が治ります。
しかし、特殊な条件下ではこの戦いが激しくなりすぎて、有害な結果をもたらすこともあります。
インフルエンザ脳症も、そのような特殊な状態ではないかと推測されています。
血管の細胞が炎症性サイトカインの影響を受けると、組織が張れた状態になります。(脳浮腫)
インフルエンザ脳症ではサイトカインの影響により、肝臓など全身の臓器や血液中の細胞も同時に障害を受けます。
インフルエンザに対する全般的な治療
検査により、脳症と診断された場合の一般的な治療
インフルエンザに対する全般的な治療として、血管から輸液を行います。
脳の圧が高いときは、圧を下げるための減圧剤を使用します。
けいれんが起きているときは、けいれんを止める抗けいれん剤を使用します。
器官にチューブを入れて、空気の通り道を確保し、人工呼吸器を使って呼吸を助けるようにします。
インフルエンザ脳症と解熱剤
インフルエンザで使えない代表的な解熱鎮痛成分
- アスピリン、バイアスピリン、バファリン配合錠
- PL配合顆粒、幼児用PL配合顆粒、ピーエイ配合錠
- エテンザミド
- ボルタレン、ナボール
- ポンタール
インフルエンザの発熱時にアスピリンなどを使用すると、インフルエンザ脳症を引き起こしたり症状を悪化させるとして、小児への使用は避けられるようになりました。
インフルエンザの解熱には、アセトアミノフェンという成分の解熱鎮痛剤が推奨されています。
アセトアミノフェンは解熱効果がおだやかで、インフルエンザ脳症を引き起こす可能性が低いといわれています。
また、イブプロフェンを成分とした解熱鎮痛薬は比較的安全に使用できます。
イブプロフェンは作用が比較的おだやかで副作用も少なく、アセトアミノフェンの次に安全性が高い成分だといわれています。
インフルエンザ脳症にロキソニンを使っていいの?
20歳以上の成人には、インフルエンザ治療薬(イナビル・タミフル・リレンザなど)と一緒にロキソプロフェン(製品名:ロキソニン錠など)が処方されることがあります。
ロキソニンの主成分であるロキソプロフェンは、インフルエンザ脳症などとの関連性を示す報告や資料がないことから、症状によってはロキソプロフェンの方が適していると判断されます。
ロキソニンやアセトアミノフェンなどの解熱剤で熱を下げ、しっかりと安静できるようにしましょう。
インフルエンザ脳症 ガイドライン まとめ
インフルエンザ脳症は幼児がかかりやすいので、もし高熱が出て、けいれんや異常な言動が見られたら医療機関を受診します。
予防接種を受けて、インフルエンザ対策をしておく方が安全です。
普段から、うがい・手洗いを励行して、インフルエンザに備えましょう。
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